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「話芸“きまり文句”辞典」
松井高志さん
落語や講談といった、古典話芸で使われる決まり文句を集めた辞典ブログ。テーマ選びの秀逸さが注目され書籍化も果たした。 |
――古典話芸のきまり文句という題材を選ばれたのはなぜですか?
松井:大学の専攻が国文科だったこともあり、古い日本語表現は結構馴染みがあって、落語なども以前から好きだったのです。
――なるほど。では、それらの辞典をブログでつくるというアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか?
松井:1年半ほど前ですが、もともと書籍の辞典として出版したくて、資料を読んでは寄席に通って原稿をつくっていたんです。歌舞伎の名台詞集の本はたくさんあるのに、より身近な落語に出てくる「忘れられかけたことわざや、もののたとえ」を集めた本はほとんどない、ということもありましたし。ところが、今でこそ落語ブームですけど、当時は演芸の本の企画を採用してくれる出版社が見当たらず、原稿をつくったものの、お蔵入りになりそうだったのです。そんな頃にちょうどココログがスタートして、私も以前からニフティ会員だったので、せっかくだからインターネットで原稿を公開しようと。うまく人目に止まれば、出版化のチャンスもあるかもしれない、とも思いましたしね。
――それで実際に先日、ブログが『人生に効く!話芸のきまり文句』(平凡社新書)として書籍化されましたよね。書籍化に至る経緯を教えていただけますか?
松井:ブログがたまたま日経新聞の文化面で大きく紹介されたんですね。それを読んだ平凡社の編集者さんがコンタクトしてくれて、今回の書籍化の話が進むことになりました。当初の意図はこれで達せられたのですが、本が出てもブログは続けたかったので、ブログにある1900の項目から200項目を厳選しつつ、各項目に加筆しています。そうしないと本とブログ、双方の読者へのサービスも成り立たないですからね。
――紙とブログでは使い勝手にしろ、つくり方にしろ、かなりの違いがあると思いますが、ブログの辞典は紙の辞典と比べてどのような利点があると思われますか?
松井:利点は、つくりながらすぐに修正できることです。ブログは内容が誤っているという指摘をいただければ、すぐに直せますからね。ただ、辞典なだけに、表示設定を「古い順」にして、「はじめに」「あ」「い」「う」……という順番で表示されているので、普通のブログのように最新記事がトップに来るようになっていません。そのためいつアクセスしても同じように見えるのがデメリットですね。これについてはコンテンツや並べ方、デザインをちまちまいじることでマンネリ打破をしているつもりです。
――現在のもの以外にも、ブログでやってみたいアイデア、やってみたい辞典はありますか?
松井:「野球きまり文句辞典」ですね。「代わった野手のところへ打球が飛ぶ」、「四球の直後の初球に注意」などのセオリーやジンクスなどから、「月に向かって打て」「今は独りになって泣きたい」の文学的名セリフなどを集めてみたいな、と。問題は辞典化できるほど項目数があるかどうかですが……。
――つくりながら徐々に増やしていくのも手ですよね。日記以外のブログをやってみたい、と思っている方へのアドバイスもお願いいたします。
松井:多くのブログを見ていると、ブログは脱力系に限る、という思い込みがみんな強すぎるんじゃないかと思います。他人に見せるテキストだということを意識していかないと、日を追うごとにだんだんとしょぼくなる危険性があります。そのため、長続きするのはある種の定まったネタや、テーマを扱うものが多いのかもしれません。ある程度記事を書き溜めてからブログを立ち上げるとやりやすいかもしれないですね。
――そうですね、テーマが絞られている場合、ストックも溜めておきやすいですしね。では最後に、最近ブログが書籍化されるケースが増えていますが、それを成し遂げられた立場から、ブログの書籍化希望者の方々へアドバイスをお願いします。
松井:私は雑誌編集の経験もありますが、自分の本を出すにあたっては、編集者としてのスキルはともかく、人脈やキャリアはあまり役に立ちませんでした。ブログがたまたま人目に止まったから本になったので、そういう意味ではブログ書籍化のチャンスは、誰にでも同じようにあるのではないかと思います。そこで人目に止まるコツですが、どんな本にしてどんな人に売りたいのかをはっきりさせた、特定ジャンルに特化したものがいいのではないでしょうか。私のブログのように、コアなファンがこつこつ集めたデータ風のものとかですね。といっても、商業出版の場合はやはりどうしてもビジネスとなるので、いくら内容が良くても実現できるとは限らないですが。どうしても「本」という形にこだわりたいのであれば、今はココログ出版のようにオンデマンドで刷ってくれるところもありますよね。
――なるほど、日記以外のブログをやるにしても、書籍化を目指すにしても、内容に一本筋の通ったものであることが重要ですね。ありがとうございました。 |