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「ソウルに通いながら、こう考えた」
くりはらかげりさん
フリーライターとして韓国のガイドブックも手がけているくりはらさん。留学生として住んでいたからこそ見えてくる、ソウルを中心とした韓国の日常風景を独自の視点で鋭く切り取っています。 |
――くりはらさんがソウルに住むことになったきっかけは、どのようなことでしょうか?
くりはら:フリーライターとして独立したときに、他の人にはない専門分野を作りたいと思い、2001年9月から語学留学をしたのが韓国に住むことになったきっかけです。それ以前からガイドブックなど、旅行関係の本の制作を通じて韓国に興味を持っていたのですが、当時はワールドカップや韓流ブームの前だったこともあり、韓国語ができる日本人が今ほどにはいなかったんです。1年半の語学留学終了後もソウルに留まり、実質3年ほど韓国で暮らしました。今は主に日本で活動をしていますが、1年のうち2~3ヶ月は韓国で過ごしています。 |
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ソウル市庁前のソウル広場で水遊びに興じる子供たち。韓国の噴水は、たいてい水遊びできるようになっている |
――では、韓国での生活の様子を伝えるブログを開始されたきっかけはなんでしょうか?
くりはら:語学の勉強が一段落し、本格的にライターとして取材活動を始めた頃、韓国で見たことや考えたことを何らかの形で記録したいと思いました。そこで、写真もアップロードできるレンタル日記サービスはないか、と探しているところでブログを知ったというわけです。
――そうして始められたブログですが、そのおかげで海外にいても、お友達やご家族とつながっているという実感などはありましたか?
くりはら:自分が外国に暮らしているということを、忘れることがたびたびありました。ブログがあることで、友だちとの距離感は日本にいるときとほとんど変わらないんです。日本にいるときも時々ソウルでの体験を書いているので、普段ブログをよく見てくれている友だちでも、メールには大抵「今は韓国? それとも日本?」と書いてあります(笑)。
――韓国に住んでいたときに、地元のネタを書く上で注意している点はありましたか?
くりはら:自分が体験した、その場の雰囲気を書くという姿勢を持っていました。例えばソウルで起きた反米・反戦デモについてレポートしたエントリがありますが、デモの思想背景であるとか、韓国人の反米感情といった話は、日本でニュースをチェックしていれば書けます。でも、投石・放水をしている横でカップルが記念撮影をしているとか、おばちゃんが警官隊よりも前に出て水を売っているといった、どこかのんびりした雰囲気は、その場にいないとわかりません。わたしはなるべくそういうことを書くようにしていました。あとは楽しく読んでもらえるような、笑ってもらえるような内容を心がけていました。
――書くにあたって苦労したことはありますか?
くりはら:それはほとんどなかったですね。どんなに些細なことでも、日本にいる人から見たら、どれも貴重な生の韓国情報であり、それなりに面白いエントリになりました。バスの中で乗客たちと運転手の会話を書いたエントリがあるんですが、実際に耳にしたやりとりを書いただけなのに、評判が良かったんですよ。雑誌とかではわからない韓国の日常を垣間見られて面白いと。 |
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韓国料理の魅力は焼肉よりもむしろ野菜。上手に味付けし火を通すのでたくさん食べられる |
――韓国の魅力はどういったところにあるのでしょうか? 食べ物がおいしいといったイメージが強いんですが。
くりはら:韓国は日本のようで日本でない、微妙な異文化感が魅力ですね。初めて韓国を訪れると、ハングル文字の洪水に圧倒される一方で、町の雰囲気が日本によく似ていることに驚かされます。私ははじめてソウルへ行ったとき、「言葉が通じないパラレルワールドの日本」に来たような気分になりました。文化的な共通点も多いですし、これほど親近感を持てる国は他にはないと思います。韓国には日本に興味を持つ人が非常に多く、すぐに友だちになれるのも大きな特徴ですね。反日感情を心配される方もいらっしゃいますが、私は個人レベルでいやな目にあったことはほとんどありません。また、おっしゃるとおりに料理が美味しいというのも魅力です。日本人には焼肉ばかりが有名ですが、実際には牛焼肉は高級料理なので、韓国では頻繁には食べないんです。普段は豚肉と野菜を沢山食べています。韓国の人たちは、コチュジャン、ニンニク、ごま油といった調味料を巧みに使い、豚肉や野菜を上手に味付けする天才だと思いますよ。
――たまらないですね! あと、ソウルのオススメスポットがあれば教えていただけますか?
くりはら:有名どころは私が手がけているガイドブック(実業之日本社刊『ブルーガイドわがまま歩き5 韓国』)に譲るとして(笑)、私のとっておきの場所は、ソウルの真ん中を東西に流れる大河、漢江の風景です。特に高速バスターミナル近くにある盤浦大橋(バンポデギョ)の夕暮れはオススメ。河原に菜の花がいっぱいに咲き、花と橋の向こうに沈む夕日はなんとも言えない美しさです。橋がライトアップされる夜景も幻想的で、数時間たたずんでいても飽きません。韓国ドラマにもよく登場する、隠れた名スポットです。 |
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ソウルの真ん中を東西に流れる大河、漢江・盤浦大橋(バンポデギョ)の夜景
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――ブログの話題に戻りますが、韓国でのブログ事情について、簡単にその特徴を教えていただけますでしょうか?
くりはら:韓国では、友人同士のコミュニケーションツールとしてはブログよりもSNS(※)の「cyworld」が圧倒的に人気で、若い人は「cyworld」をやっていない人の方が珍しいほどです。ブログはどちらかというとニュースのスクラップのような使われ方が主流で、トラックバックやRSSといった機能はあまり活用されていない印象があります。また、他のサイトの記事を写真などを含めて丸ごと引用できる機能がついていたりして、著作権におおらかな(?)韓国らしい、と思いました。
――国によってブログは独自の発展をしていくのかもしれませんね。では、海外滞在者が本国の方へ向けてブログを運営する場合、その注意点やコツなどがあれば教えていただけますか?
くりはら:海外滞在者というだけでかなり多くの人がブログに集まりますから、できれば内輪ネタは控えめにして、用語解説をつけるなど、読み手のことを考えた構成にするといいでしょう。また、先ほども出ましたが、些細なことやくだらないと思うようなことでも、日本にいる人にとっては貴重な現地の情報となります。だから、今日はこんな食事をした、町でこんなのを見かけた、何でもいいから一言でも毎日書いてやろうといった姿勢があれば面白い内容になるはずです。
――ニュースを見ていればわかることよりも、ブログではもっと生活レベルでの生の情報を知りたいですからね。では最後に、海外に滞在する方にとって、電話やメールに代わるコミュニケーションツールとして、ブログはどのように活用できると思いますか?
くりはら:ブログは海外生活の、現地の「空気」を伝えることができる点が優れていると思います。電話は1対1のコミュニケーションで、言葉もその場限りで消えてしまいますし、メールも特定の人と一通一通やりとりするのが基本です。しかしブログなら、日々の何気ない経験を綴り蓄積していくことによって、その人がその国でどんな生活をしているのか、その国がどんなところなのかを多くの人に伝えることができます。以前は、家族や友人から「韓国って反日感情が強いんでしょう? 知らない人から石投げられたりしない?」といった質問をされたのですが、ブログで現地の生活を綴るようになってからは、そういった的はずれな質問はなくなりました。むしろ、韓国に興味を持ってくれた友人も多いほどです。
――やはりブログは世界をつなぐツールといえるわけですね。ありがとうございました。
※SNS
「ソーシャル・ネットワーキング・サイト」の略。会員制のコミュニティ型サイト。日本では「mixi」「gree」などが代表的。 |